さて辞めてしまった訳だが

と言ってもまだ正式に辞めたわけじゃないけど、これで辞意が覆ることは無いんだろうなと。
んでもって何か辞めろコールしてた連中が今度は無責任だのなんのと言い出してるけどそれは軽く無視しといて。


本件の重大な問題は2点、このタイミングにした理由とテロ特が全面に押し出されたこと。
そもそもである、曲がりなりにも重要法案を片っ端から成立させてきた人間(辻本談*1)が、たかが体調不良を主な理由にして辞めるとは考え難い。
麻生や与謝野に実権握られて嫌気さしたとか、ましてや飽きたとかそんな生温い理由で辞めたとかもありえない。
というかそんなこと言ってる連中は危機意識に欠けてるんでないかと、例え口だけだとしてもだ。
まぁ要するに、テロ特措法を通す為に本当に職を賭してしまったと言うのが表層レベルでの妥当な見方であろうかと。
問題はテロ特が職を賭すに値する案件なのであるかだが、どうも市井レベルは愚か軍事マニアでもテロ特に対する評価は低い。


テロ特措法、正式名称「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」という良くある長ったらしい名前の法律である。
これによって自衛隊はインド洋において他国への給油活動や救難捜索任務にあたっている、と言うわけであるが。
まず油を入れた米艦がアフガンでなくイラクでの作戦に云々は軽く流す。
テロ特に合致した目的で使うことと同意なしの移転を認めないことは交換公文にて当該国と確約されているのであるから。
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2006/2006/html/i5134000.html#i5134000_2

9)米英国に加え、03(平成15)年2月にドイツ、ニュージーランド、フランスと、同年3月にイタリア、オランダ、スペイン、カナダ、ギリシア、04(平成16)7月パキスタンと交換公文を締結し11か国となった。これらの交換公文は、わが国が支援対象国に対して行う協力支援活動が、テロ対策特措法に基づくものであることが明記されており、また、わが国が協力支援活動として提供する物品については、テロ対策特措法の目的に合致して適切に使用されるべきこと、また、わが国の事前の同意を得ないで第三者に移転してはならないことを支援対象国に対して繰り返し説明し、各国とも了解している。

ここで重要な国をピックアップするとなると、まずはドイツとフランスであろう。
この2カ国はイラク関係で米英と対立状態と言っても良いが、一方でアフガンにおける国際治安支援部隊ISAF)ではNATOの中枢戦力として協調姿勢を取っている。
というかアフガンで展開している対テロ戦争に反発している国など少なくとも欧州じゃ見つけられないし、ISAFには東欧北欧の小国まで含め欧州ぐるみで参加していると言ってよい。*2
もう一つ別の見方をすると、ISAFには日本とロシアを除いたG8構成国全てが参加している。
この点を踏まえた上でインド洋での活動に目を向けると、テロ特措法の第一の要点が見えてこよう。


もう一つの重要な存在がパキスタンである。
世界地図を広げれば一目瞭然だが、パキスタンの協力はアフガンでの活動を継続するに当たって非常に重要な存在である。
ついでに言ってしまえば、対テロ戦争という舞台では数少ないイスラム側の協力国でもあるのだ。
そのイスラム側に居るパキスタンが何故に欧米各国と同じステージに立っていられるかと言えば、給油活動を通して日本がクッションになっているから。
もっともそれだけが理由ではないのだが、パキスタン国内の世論が厳しい状況にあっては無用な火種を生み出すのは望ましくない。
テロ特の期限切れで海自が撤退してしまえば、それが引き金となってパキスタンが舞台から降りてしまう可能性は決して低くないのだ。


パキスタン対テロ戦争の舞台に引き止める理由は単にアフガンでの活動を継続させる為だけではない。
忘れかけられているがパキスタンは名実共に核戦力を保有する国であり、更に恐ろしいことは彼らと決して仲のよろしくない(それどころか国境を接し領土紛争まで抱え過去に3度も全面武力衝突している)インドまでもが核保有国であるということだ。
さて対テロ戦争から降りたが為に政情不安となったパキスタンはどうなるのか、その時インドはどう動くのか、正直言って余り考えたくないし考えても碌なことが浮かんでこない。


ああそういえば誰だか忘れたけど給油活動の替わりにISAFの後方支援をするとか言ってたような気もするね。
オランダやカナダが自走砲や戦車を持ち込んでるような文字通りの戦場に自衛隊を送り出す、と。
サマワで他所の国に護衛されながら復興活動してたのとは訳が違うんだが、そこんとこ判って言ってたとは到底思えんのはどうしてだろうね。
勿論対テロ戦争へのコミットメントを深めるという点ではISAFへの参加自体は悪くないんだが、未だに集団自衛権どうのと言ってるようではリップサービスにすらならないし、当然ながら上記の理由でインド洋から撤退する理由にもならない。


インド洋での活動に関しては他にもシーレーンの安全確保など重要な点はあるのだが、所詮国外問題という訳かこういった問題はちーっとも知られないのでありんした。
ISAF参加国を見るまでも無く対テロ戦争は先進国の義務、という認識はまぁ少なくとも我が国内ではあんまり多くないらしい。


そんな訳で対テロ戦争を政争の具にしてしまった民主はG8初め対テロ戦争に参加している世界中の国から、対テロ戦争に反対する要注意集団と看做されるのでありましたとさ、というのが今後予想され得る展開っていうか首相が考えているシナリオ、多分。
要するに外圧利用して小沢と民主をぶっ潰そう(ついでに自民内でテロ特に反対してる連中も)って魂胆だ、しかも米国だけでなくG8初めとする先進国のほぼ全てからという㌧でもな外圧。
このタイミング(テロ特での党首会談申し込みとそれが断られたという事実が得られた)を狙ったのは、日本国内で誰が対テロ戦争に反対しているかを国外に表立って盛大にアナウンスするため。
まぁ民主どころか日本の国そのものが反テロ連合から弾かれかねない恐れがあるのは、米国の最新の反応を見れば判るのであるが。*3
実際に今後どうなるかは外字メディアにひたすら注目し続けるしかないのがちと面倒ではあるが、日本語メディアはこの一件では全くもって当てに出来ないので仕方ない。


ていうかドイツ語もフランス語も読めねーよ今畜生。


*4

*1:http://www.kiyomi.gr.jp/blog/2007/09/12-1367.html

*2:http://en.wikipedia.org/wiki/International_Security_Assistance_Force

*3:http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/afro-ocea/news/20070913k0000e030025000c.html

*4:ちなみにこの分析、完全に他人の受け売りであるからして書いてる人間のオツムには期待しないで欲しい。