エンジン停止の考察

とりあえずこれの話である。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2013/06/20a.html
まずは報道と併せて判っていることを列記してみよう。
・エンジン停止事象の発生日は5/13日
・納入前の5号機を用いた速度超過警報装置の作動試験をKHIの社内テスト飛行として実施
・高度10,000mから約2,000m急降下後の減速時にエンジン停止
・量産化に伴うエンジン形状変更に由来する燃焼の不安定化が原因
・停止したエンジンの基数が不明瞭


停止数であるが報道によって「1機」であったり「複数」であったりと、はっきりしない。
ものによっては「推力が低下」と書いているので、ここからは4基のうち最低1基は動作し続けたとも読み取れるが、これも不確かである。
かと思えば後追い報道で4基全て停止したと書いていたりするし、もう少し落ち着いた報道は出来ないんかと言いたくなる。
作動試験の対象となった警報装置がエンジンの付属物なのか、機体側の付属物なのかもこれだけだと断定しかねるところだ。
そして形状変更であるが、試験用エンジンの量産化改修に関する予算執行審査調書から、少なくともファンブレードと燃料ポンプに変更が加えられていることが判る。
どちらも燃焼の不安定化の要因として疑うに十分であるが、変更部位が他にもあることには留意すべし。
どのエンジンが停止したのかが不明瞭なのでこの先は仮定を加えた推察であるが、4基全て停止である場合は搭載位置によって挙動に差が生じ難い部分がより疑わしくなる。
そうでないのならば搭載位置によって挙動に差が生じやすい部分が疑わしくなってくるだろう。
今回のシチュエーションでファンブレードと燃料ポンプがどちらに該当するのか、くらいまでが考察の限界か。


次に量産段階に入って発生した不具合の事例として、参考に幾つか列記してよう。
・T-4搭載エンジンF3-30のタービンブレード折損事象/編隊飛行時の常用エンジン回転領域での共振による金属疲労を原因とする
・T-4高度計指示誤差/ピトー管の量産化に伴う製造工程変更による静圧口周りの盛り上がりを原因とする
・Boeing777搭載エンジンTrent800の燃料供給異常による推力全損失(BritishAirways38便)


他にも5年以上前の世間じゃ忘れ去られてそうな話だが、JALANAの777が搭載していたPW4000が製造工程上のミスでタービンブレードに腐食を起こしていたなんてこともある。
この時は異常振動を起こしてフライトを取りやめるといったインシデントが何件か続いていたり、整備過程で腐食が見つかっていたりした。
P-1で発生した事象は「通常の運用では想定されない、高高度における高速度での急激な機動」でのことだが、これらの事例はいずれも通常の運用におけるトラブルである。
「深刻な不具合」ってのはこのくらいのレベルになってからじゃーないのかね。
物理的な破損が生じたりBA38便の様な事態に陥っていたというならともかく、然るべき手順を踏めばターボファンエンジンでも空中再始動は可能だし、実際に復帰しているのだから。

MACCS再び

何だっけそれ、という人は「海上航空作戦指揮統制システム」で復習してこよう。
P-3CにASWOCが用意されたように、P-1にはMACCSである。
無論というか当然ながらP-3Cとの連接も可能となるように整備されている。
以前これが話題になったのは、可搬型が整備されるという話があったためだ。
最近になって検索してみたところ、「可搬式海上航空作戦指揮統制ユニット」としてLYQ-103の名称が付与されていた。
これに「航空戦術支援通信システム」ASCOMMの可搬型である「可搬式航空通信ユニット」LYQ-104を組み合わせることで、可搬式MACCSを構成するということになっている。
LYQ-103は富士通、LYQ-104は日立が受注しており、23年度のレビューシートでは根拠法に「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律第7条」を挙げていることから、ジブチ基地での運用が考えられていることが伺える。
ちなみにサポート役務の公示を探すとSolarisだのWindowsServerだのウィルスバスターだのといった構成ソフトウェアが載ってたりするが、見ても判らないのでパス。
同様に構成ハードウェアの載ってる公示もあるので、気になる向きには探してみると良いだろう。
ただシステムの輸送手段や構成品の規模までは判らなかったが。