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信号処理部の話

量産機配備間もないP-1であるが、25年度より早くも能力向上の為の研究が開始されている。
「哨戒機搭載システムの対潜能力向上に関する研究」であるが、線表は25年度に研究試作を開始し28年度内に所内試験を終えるとしている。
このスケジュールはP-1のCOTSリフレッシュに合わせて能力改修を実施することを念頭に置いたものであり、2020年代以降の潜水艦に対する優位性を確保する為ともしている。
研究は主として戦闘指揮システム、音響システム、非音響システムの3カテゴリを対象としており、非音響システムはレーダ及び光学センサを内包するもの。
レーダシステムと光学センサの能力向上は主として信号処理部を対象としており、潜没直後の潜水艦及び浅深度目標の探知及び追尾を速やかに実施し得るものを目指すとしている。
2013年の技本パンフによれば「海面監視技術」「海面流ベクトル推定技術」「海面温度処理技術」の3点が挙げられており、前者二つについては東芝が関係すると思われる特許を登録している。
レーダシステムにおいて信号処理部の改善は能力向上の常套手段であり、HPS-106もまたこの部分に大きく手を加える研究が進められることとなる。
本研究は音響センサに依ることなく水中音響の複雑な浅深度での潜水艦の活動を制約し得るものであり、特に浅海域とされる東シナ海などでは大きな価値を持つであろう。
また信号処理部の能力向上であることから、後述するHPS-106派生の護衛艦搭載型対水上レーダシステムへの適用も考えられる。

空中線の話

HPS-106のアンテナに関しては以前詳しく述べたが、おさらいするとXバンドGaN素子と16個のアンテナ素子を組込んだボードモジュールを100枚並べてフレームに固定したユニットで構成される。
このアンテナ部であるが、意外と広範囲に派生ないし流用されているようである。


まず研究試作品への流用として「薄型空冷アクティブアンテナ」が、2010年の防衛技術シンポジウム会場内においてポスターセッションで公開された。
液冷方式の既存アンテナモジュールを空冷化することで、小型軽量及び省エネ化を図るという趣旨の研究である。
この中で当該アンテナモジュールの使用可能最大温度が65度であることや、1次冷却装置の重量や容積及び電源容量なども知ることが出来る。
また本研究は「早期警戒対空型レーダ技術の研究」の一環として、19年度から22年度にかけて実施されていたものの一部でもある。
当該研究の成果は「遠距離探知センサシステムの研究」に反映されることとなっており、信号処理関係の技術と共にアンテナ部も流用ないし派生という形で使用される様である。


「遠距離探知センサシステムの研究」あるいは「電波・光波複合センサシステムの研究」では、試験母機の胴体下部に装着したカヌー状のフェアリング内に長大なアンテナを搭載することになっている。
このアンテナは下方もしくは上方から俯瞰したイメージ図あるいはDMUイメージと思われるものが、幾つかの資料に掲載されている。
技本の外部評価報告書に掲載された比較的新しい方のイメージ図を見る限りでは、片面8基のHPS-106のアンテナユニットと思われるものを縦向きにした上で並べて三角柱のフレームに固定していることがわかる。
元が長方形のアンテナユニットを片面8基並べる配置は、以前の概算要求資料などに掲載されていたイメージ図とも共通であり、この部分はおそらく固まっているものと推測できる。
その上で前者のイメージ図は1基のアンテナユニットが、HPS-106と同様のフレームにアンテナモジュールを並べて配置したものであることが判る。
これがHPS-106のアンテナユニットそのものか空冷化したものであるかまでは判らないが、いずれにしても流用なり派生なりしたものであるとは言えよう。
なお裏付け、という訳ではないが当該研究のアンテナ部及び周辺構成品は東芝が落札していることが行政事業レビューから知ることができる。


ここで少し脇道に逸れて、HPS-106のアンテナユニットを8基並べたアンテナがどんなものか考えてみよう。
まず素子数は1,600*8=12,800個となり、アンテナ面積はHPS-106が約33cm*約2m=約0.66m2と推測されるところから5.28m2ということになる。
ただし実際にはフレーム部分の面積が各ユニットの間に挟まるので、外周部の面積を除いても約7.38m2といったところ。
面積がかなりあやふやになってしまったが、とりあえず幾つか参考になりそうな大型レーダアンテナを比較に出してみよう。
まず類似システムということで737AEW&CのMESAであるが、Lバンドアンテナだからか素子数は288個と少なめで、面積は写真から推定するところでは約10m2であろうか。
次いで同じXバンドアンテナながら車載式のAN/TPY-2を見てみると、素子数は25,344個と圧倒的、面積も9.2m2と車載式であることを忘れそうになるデカさだ。
本開発に移った場合にどうなるかは判らないが、もし研究試作と同じXバンドのアンテナを使うのであれば、素子数も面積も増大させることになると予想出来よう。
ちなみに以前「電波・複合センサシステムの研究」について書いた時のAEW&C型モデルに載せたアンテナは、改めて採寸したら片面13m2以上だった。
もっと小さくても良かったね。


最後に取り上げるのが「艦艇用潜望鏡探知レーダーに関する研究」で、HPS-106をベースにした潜望鏡の自動探知識別が可能な艦載レーダを25年度計画護衛艦に後日装備するものだ。
とは言ってもその概要は非常に不明瞭で、艦橋構造に4基のアンテナユニットを固定配置するという正気を疑いたくなる噂の他に具体的な話は見えてこない。
そもそもアンテナ部のみを流用するのか信号処理部まで含めたシステム丸ごと移植なのか、あるいはアンテナモジュール単位までバラした上での流用なのかすらも判らないときた。
アンテナ面積自体はOPS-28の2倍ぐらいで、あきづき型が搭載するFCS-3AのXバンドアンテナの下あたりに収まるか収まらないかという程度の横幅である。
ちなみに他の2件が空中目標の探知を目的としているのに対し、本研究のみが主目標を元のHPS-106と同じ潜望鏡に絞っている。
信号処理部も含み得るという推測はそこら辺から出てきたもので、これが全く別の用途であったら切って捨てていた考えだ。
また信号処理部の流用があるとすれば、最初に取り上げたCOTSリフレッシュに伴う能力向上をこちらに適用する可能性も出てくる。
護衛艦の対水上レーダが潜望鏡を下げたまま浅深度に留まる潜水艦を探知可能になれば、その価値は計り知れないものとなろう。