P-1とF7-10ネタをダラダラと

F7-10スペック

まず、このあいだの技本研究発表会で出た数字をつらつらと書き連ねてみる。
全長:2.7m
ファンケース径:1.4m
重量:1,240kg
推力:60kN/6,100kg/13,500lbs
燃費:0.34kg/hr/daN
バイパス比:8.2


その他ICAO基準達成度(排出規制値100として)
NOX:54
CO:33
UHC:0.5
スモーク:74


騒音対策として吸音タイルの貼り付けや、ファン動翼と静翼の間隔の調整。
塩害対策としてチタン合金やニッケル合金、アルミニウムなどを多用。
XF5-1からの改造で燃焼室温度を下げてコスト低減と寿命延伸を図る。

燃費

kg/hr/daNとか訳の判らん単位が使われてるが単位をkgからN系に統一すると0.33くらいか?
やっぱ変換要らなかった。
同一推力帯域のCF34-8C1が0.37lb/hr/lbなので10%良好という謳い文句はまぁ間違ってない筈。
http://www.jet-engine.net/civtfspec.html
でもT/O時のSFCを直接比較する意味はあるんだろうか。
とりあえずCFM56-7Bと比べてもまだまだ優位なので「4発だから燃費悪い」とかいう主張は比較問題としては成立し得ないことになる。
そういやT56-A-14やAE2100D3といったターボプロップSFCはこいつらより更に悪いようだが、ターボプロップの方が燃費で有利というのは完全に過去の話になってしまったのだろうか。


とりあえずF7-10は現行の同クラスエンジンと比較しても時代相応の性能を有していることが読み取れる。
もっとも塩害対策なんて旅客用では不要であろうから、これに費やされているリソースを他に振り向けてやればもっと旅客用に相応しいエンジンになると思うが。
具体的には素材を換えて価格を下げたり、燃焼室温度を上げて更なる燃費改善を図ったり。

騒音に関して

上述した通り、F7-10はやたらと排ガスやら騒音やらの環境対策に気を使ってる。
機体側、フラップとか機首形状とかでどんだけ騒音対策してるかは謎だが(高速化の為の最適化としか言ってない)兎にも角にもP-1はやたらと環境に配慮した飛行機である。
どんな音かは実際に聞くなり飛んでる映像見るなりしなきゃ判らんが、"測定値"についてはどうやら良好な模様。
http://www.tsunashima-net.com/cgi-bin/blog.cgi/permalink/20071120174553

同行した綾瀬市基地対策課職員の測定器による調査ではアイドリング時、P3Cが83デシベル、XP1が76デシベル、離陸時がP3Cが81デシベル、XP1が70.6デシベルだった。着陸時はP3Cに比べるとXP1は言い過ぎかもしれないが、まるでグライダーが着陸してくるかのようだった。

ちなみに10dB差ってのはMRJの競合機に対する目標値だったりもする訳で、中々悪くないと思われる。*1

今回の視察で、XP1の低騒音は明らかになり、安全性も現行のP3Cよりはるかに高いということだ。低騒音、安全性が担保されたい今、反対する理由は何もない。

と言う事であるのだが、ばっちり反対してる人も居る訳で。
http://blog.goo.ne.jp/ueda01/e/935f63ab0d08e4e5bd60a13cc03bdc37

問題はここからです。これをもって厚木基地でXP−1の性能評価試験を行ってもよい、という結論にもっていくのは、よく考えなければなりません。

http://blog.goo.ne.jp/takakuyosimi/e/5ae4de8a3f54da343052e6e67ea682a3

昭和46年当時国は、自衛隊部隊を厚木基地に移駐させることにたいして、今後は負担軽減に努める事を約束し 現在の哨戒機P3Cなどの「ターボプロップエンジン」は除くとしているが、ジェット機の乗り入れは緊急やむを得ない場合に限るとしている。今回のPXのターボファンエンジンは明確に違反となる。と考える。

(ちなみに下の方も視察結果を書いてたがコメント付いた後で消しやがった)
騒音が低いのを良い事に耳を塞いで聞こえない振り(巧くない
P-1とP-3Cの騒音レベルの差は歴然としており、更に言うなら速度や飛行高度が高くなったP-1は特定地点を騒音に曝す時間そのものも短い。
逆にP-3Cは老巧化と設計そのものが古いことによる信頼性の低下などが指摘出来よう。
ついでに指摘しておくなら、P-1への更新はP-3Cと1対1を超えることはありえない、つまり機数が増えることなど無いという訳でもある。
要するに単純に周辺の環境被害低減という観点で見るなら、寧ろP-1への早期更新を訴えるべきなのだ。
基地そのものを無くせという主張であるなら、この"負担"を他の地域に押し付けなければ実現しないという現実を直視すべきである。
また当たり前の話として基地を全く別の地域に移すことで新たな負担と費用も生じるのであるが、新たな基地の整備費用を出せるほど我が国の国庫は肥えていたであろうか?
だからといって基地を無くして新たな基地を造らないという訳にもいかない、我が国の国防環境は決して手を緩めることの出来ない、極めて危ういバランスの上で辛うじて成立しているのだ。
そこへ来て基地を無くせ、防衛戦力など知ったことか、などという主張は単なる身勝手と断じられても何ら不思議ではない。


騒音の問題は恐らくC-XやMRJでも付いて回ることだろうが、ジェット推進だから煩い、プロペラ推進だから静かなどという固定観念は今後は通用しないと言うことをよくよく考えて貰いたいものである。
ターボファンエンジンはバイパス比の劇的な向上によってターボプロップの領域に益々近づいており、MRJが採用を決めたGTFでこの傾向が更に加速するのは間違いない。
これは騒音に限らず燃費や排出ガスなど他の環境性能でも同様である。
都合良く情報を取捨し、実測値が都合の悪いものであれば無視する、などと言う真似は仮にも市政の代表者であるなら謹んで頂きたい。

07/12/01追記

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071201-00000149-mailo-l14

ジェット機海上自衛隊次期固定翼哨戒機(PX)の試作機2機が来年度から4年間、厚木基地綾瀬市大和市)に常駐して性能評価試験を実施する問題で、綾瀬市の笠間城治郎市長は30日、「新たな機種が来ることは、騒音の市民負担がプラスになる」と述べた。騒音増を明確に懸念した発言は初めて。

懸念ってそんだけ?
じゃぁ51航の運行プランを都合すれば良い。
第51航空隊とは海自の飛行試験全般を担当する航空集団直轄部隊、空自の飛行開発実験団に相当する。
従って海自が保有する主力機はADTW同様に一通り揃えており、配備数の少ない機材も初期は同部隊で運用される。
でもって現在51航所属機で厚木に居るのはP-3CとUP-3Cな訳で、今更P-3で試験することもそんなに無いからこいつらの分をP-1に振り分ければ良いと。
それでも足りなきゃ実働部隊の3航と6航からも都合して貰えば良いだけ、ほら簡単。
一時的に鹿屋や那覇P-3Cが増えるかもしれないけど気にしない気にしない。
岩国に分遣する51航所属機も増えるかもしれないけど気にしない気にしない。


負担軽減って結局はそういう形でしか実現しないんだよ?

P-1は格好悪いから性能も悪い?

タイトル見て疑問符が大量に浮かんだならそれが正常。
http://www.ne.jp/asahi/shin/ya/intr/ashikawa2/12.htm

武器というのは非常におもしろい一面があって、いい武器はえてしてカッコいいんです。機能性とデザインというのはかなり一致します。大戦後に乱発された米空軍の戦闘機なんか、理論が煮詰まらないうちに勢いで造ったようなものなので、やっぱり格好が悪い。もっとダイレクトに言えば弱そう(笑)

その見た目の印象というと、うーん、開発している人には悪いけど、お世辞にも格好いいとは言えない。むしろヤボ。
同じく川崎重工で開発の進むC-X(次期輸送機)が700系新幹線だとすると、このP-Xは初代新幹線の0系に近いアナクロさがあります。

700系格好良いか?
じゃなくて、どうも感性が合わないらしいということを抜きにしても彼は機能美というものを勘違いしてるとしか思えない。
模型誌に製作記事を載せるような年代の人たちに言わせれば、60年代のセンチュリーシリーズ(F-100〜F106あたりの一連の機体)はどれもこれも格好良かったそうである。(F-101だけ醜悪とか言われてて可哀相だったな)
じゃぁ米空海軍や世界中の空軍が採用した同時期の傑作戦闘機F-4ファントム?の評価は、と言えば「格好悪い」だったそうである。
ついでに言わせていただけば、C-130もオイラの感性からすれば「格好悪い」のであるが、

C-130は一見すれば鈍重に見えますが、長年に渡って磨き込まれてきた機能美みたいなものがあります。改良に改良を重ねて傑作機と呼んでもいい機体になっているし、さまざまなバリエーションもあって、元々のシンプルさが輝いていますからね。

ということなので益々感性が合わない。(J型とか傑作シリーズの面汚しじゃん)
機能美というならAn-124とかIl-76の方がずっとシンプルかつ完成された形をしてるし、実際両機とも良い性能の機体だ。
そもそも機能美という考え方自体にオイラと彼とではズレが有るような気がしてならない。

でもね、P-Xに目を向けると。そういった機能美が見えないし、なにかいろいろなところに中途半端さを感じてしまうんですよ。これでどういう仕事をするか、という部分も含めて。例えば、エンジン。このP-Xは国産機としても初の4発ジェット機なんだけど、機体と併せて開発中のエンジンに難ありと言わざるを得ない。

P-1が4発であることを選択したのは正しく固定翼哨戒機に求められる性能と機能を追及した結果であるのだが、それが"中途半端"とは感性が合わないどころの話ではない。
冒頭の機首形状にしても、大型固定AESAを搭載した上で前下方視界を確保するという機能性の追及の結果なのだが、これもやはり中途半端なのであろうか?
オイラに言わせりゃ機能面で妥協しまくってるP-8Aの方がよっぽど格好悪いと思うのであるが、これも感性の違いで片付けてしまうべきであろうか?
例えば機首形状はあの通り旅客機そのままで、AESAどころか従来のP-3が積んでたサイズのレーダーしか納まらないし視界も固定翼哨戒機のそれとは思えない。
尾部にはAPUを残してるものだからMADブームも伸縮式になってしまい、更には後部レーダーの視程すら制限されている(というか積んですらいないかも)
P-3のような胴体短縮すらしてないものだから爆弾倉を機体後部に押しやられ、搭載量やサイズが十分でなかったりソノブイランチャーの開口部が制限されたり。
主翼も中低空を低速で安定して飛ばすにはあまりにも面積が小さい、機動性は元よりミッションペイロードでも到底固定翼哨戒機のそれを満足するとは考えられない。
そんな訳でオイラはP-8Aを"格好良い""美しい"などと評価できず、それどころか"格好悪い"とすら思ってるわけだ。
要するに兵器の"機能美"とはその形状がその形状であることに"必然性"を有しているか、その"必然性"が兵器としての"機能性の追及"によってもたらされた物であるか否か、それが兵器の"格好良い""格好悪い"を分け隔てる分岐点であるとオイラは考えてる。
勿論"機能美"とは別の感性で格好良いと思うことはあるが、それが性能評価に比例しないのは言うまでもない。
ハンドレーページ・ヴィクターが美しいと言って同意してくれる人間は果たして何人居るか、ましてや優れた機体だったと何人が評価するであろうか?(でも3Vの中で一番美しいことには異論を認めない)
主観を元に客観性の必要な評価をすべきではないし、逆に美的評価だからと言って主観の問題と居直るのも決して健全な態度とは言えないのだ。

*1:10dBの差があると音圧自体は1/10、人間の聴覚には1/2の差が生じる