航空戦力の迷惑な評価

ここ2ヶ月くらい話題の某所に限らないことだが、レーダによる哨戒索敵を過大評価する論調が実に多い。
レーダによって広範囲をカバーする早期警戒機や哨戒機によって敵洋上戦力は完全に捕捉できる、といった類のものだ。
P-1とその搭載レーダHPS-106もどうやらそういった主張の出汁に使われそうであるが、そもそもP-1という兵器はその様な主張とは相容れない。
レーダによる索敵で洋上戦力が完全に捕捉出来るなら、光波センサHAQ-2はどこで使うのか。
風防後ろの丸窓やバブルウィンドは何の為にあるのか、CMDやMWSなど自機防御システムは何をするのか。
そもそも直接運用コストの増加を覚悟の上で4発構成としたのは何ゆえか。
レーダシステムは彼らが思うほどに万能でも完全でもないし、だからこそ電波ステルスという概念が成立し得るのだというのに。

上陸されたらどうするか?

上の続き、ここである議論における前提が丸っきり違ってくる。
戦車不要論、あるいはエスカレートして陸上戦力不要論はとどのつまり、上述したような航空戦力や海上戦力によるパーフェクトゲームが成立し得る、という前提があるのだ。
そしてこれらに対する反論は基本的に、航空戦力や海上戦力によるパーフェクトゲームは成立し得ないという前提がある、はず。
断言しないのは、戦車不要論への反論において戦車の意義を抑止力に求めるだけに留まっていることがあるからだ。
すなわち戦車(あるいは陸上戦力)が存在することで初めて敵は重戦力の着上陸を企図し、これにより航空戦力や海上戦力の標的が生まれるという説明である。
だがこの説明では陸上戦力が如何なる形で敵の脅威となり、抑止力となるのかが示されていない。
陸上戦力、とりわけ戦車を中核とした重戦力の国土防衛に於ける最大の役割は逆侵攻による失地回復であり、これを達成することによってのみ防衛側は戦争のイニシアブチを握れるのだ。
これは本土への着上陸なり島嶼侵攻なりでも変わらぬ構図であり、侵略者は初動の着上陸に必要な戦力のみならず、この逆侵攻を跳ね返し得る戦力の算段を迫られることとなる。
そして航空戦力や海上戦力の出番は初動への対応よりも、寧ろ我の逆侵攻を企図する段階においてこそ増す。
何しろ初動段階と異なり何処で何を攻撃すれば良いのか、遥かに判りやすいのだ。

それはさておき10TK

細かいところはもっとエロい人が調べたり解説したりしてるのでとくには触れない。
ここで取り上げるのは、戦車の軽量化が何を意味するか。
結論から言うと、火力と装甲を犠牲にしない軽量化が成立し得るのであれば、それは回りまわって火力の向上へと繋がる。
そも戦車の究極的な目標は、敵の最も強力な火器を備えた地上ユニットを素早く確実に効率的に殲滅撃破することであり、突き詰めればより多くの敵戦車に対して効果的な火力投射を実施することと要約できよう。
効果的な火力投射の第一歩として敵戦車の装甲を確実に打ち破る火砲、これは簡単に想起するはずだ。
より多くの敵戦車を撃つ為に、次の目標を打ち抜くまで撃破されることの無い強靭な装甲、これも想起するのは容易い。
短時間で次の目標を撃つ為に、安全迅速確実な次弾装填の為に自動装填装置の搭載、これは90TKの説明でよく用いられる。
究極の無駄撃ちである外れ弾を減らすべく、高度な射撃統制装置によって安定化された照準、やはり90TKの説明に頻出する。
軽量化と戦術機動性の向上による優位な位置からの射撃機会増大、及びC4Iによる情報量増大への対応能力拡大、これこそが10TKであろう。
優位な位置からの射撃機会増大、これが攻守両面において火砲や装甲、射撃照準性能を補強し効果的に能力を発揮させ得ることは言うまでもない。
そして情報量増大への対応能力拡大は、単なるマンインターフェイスの問題のみならず、車両プラットフォームそのものが刻々と取得する情報に追いつき、目標への射撃という形でアウトプット可能な性能を求めている。
情報が得られても撃てる位置に居ることが出来なければ無意味であり、撃つ前に撃破される程度の防御力では心許なく、撃っても確実に目標を無力化しえなければ価値は乏しい。
ただ安いからという理由でそういうものを持ち上げる論調が有るようだが、当方は賛同しない。