防衛省ですが今年はこっそりはっちゃけてみました

ネジが何本㌧でるか数えてみようの巻

とりあえず最近出たネタを大人しめのから順にピックアップ。
まずは技本サイトの採用案内に追加されたフラッシュムービー。
http://www.mod.go.jp/trdi/saiyou/index2.html
注目すべきはNBC偵察車と短SAM改IIと無人機研究システムの写真、従来はイラストかCGしか公開されてなかった装備だ。
特にNBC偵察車は将来装輪ファミリーの第1号ということらしいので、後に続く各種派生型を予想する上で貴重な資料となる。
ファミリーから仲間外れの機動戦闘車共々ろくに期待してないのは内緒だ。
無人機研究システムは某雑誌でもF-15に吊るした写真が載っていたが、脚を降ろした状態はこれが初めての筈。
短SAM改IIは箱型ランチャーなのでもしかすると将来短SAMかもしれない。


二つ目は21年度概算要求
http://www.mod.go.jp/j/library/archives/yosan/yosan.html
C-2/F-X先送りとかF-15/E-767改善とかATD-Xとかは全然普通の内容。
が7頁から早速暴走開始、まずは「固定翼哨戒機を国外で効果的に運用するための可搬式海上航空作戦指揮統制システム(MACCS)の整備」というやつ。
MPAというかP-1をインド洋か東南アジアあたりに持っていって継続的に運用しますよ、という意思表明に見えるが本当にやるつもりなのか。
あとP-3Cと連接している同様の現有システムはASW支援システムと謳っているが、今度のは明らかにASuWその他のミッションも想定していることが名称から窺い知れる。
MACCSは多分 Maritime Aircraft Combat Command System とかそんなんじゃないかと。
移動式医療システムは事業評価の方に詳細があるが、それによると国連医療レベル3の医療機器等を備えるとのこと。
参考資料を見れば判るが、X線やCTまで備えるなどやたらめったら高度な機器が名を連ねている。
海外支援のみならず国内での大規模震災等に備えるということだが、規模も内容もえらいことに。
IED対処システムもやはり事業評価に詳細があって、82CCVっぽい車両の前にカエルみたいなセンサがくっついてる。
国際貢献活動等で使うということらしいが、IEDが道端に仕掛けられてるような場所に将来行く可能性が出てきたということだろうか。
あと当然だが国内で戦線後方に浸透したゲリコマがIEDを仕掛ける可能性もあるので、そっちにも対処できる装備となりうる。
ヘリのエンジン能力向上と防弾板整備は恐らくセットで、多分CH-47F相当の機体が調達されるんでないかと。


さて11頁に飛んでみると、二つほど変なものが目に付く。
一つは「車両搭載用リモートウェポンステーションの研究」で、やはり事業評価に詳細がある。
試作品概観図があるが、搭載車両に軽装甲機動車を想定しているのが判る。
あと当該事業の必要性では、外国製の類似品を「既存火器との適合性や将来の改善・改良に制約を受ける可能性あり」としている。
まるで少し前にニュースになった何処ぞの戦闘ヘリみたいな話だ。
機動妨害システムは26ページに概要図があるが、何と言うか省力化と操作人員への危害低減の努力が涙ぐましいというかここまでするかと。
地雷がどんだけコストパフォーマンスに優れていたかを、こういう形で思い知らされるのもなんか泣けてくる。
次頁では宇宙利用に関する項目がズラズラと。
これは寧ろ、ようやく大手を振って取り組めるようになったかといったところ。
13頁では自衛隊デジタル通信システム(戦闘機搭載用)というのがあるが、やはり事業評価に資料有り。
少し前から幾つかの報道媒体でF-2とF-15J非MSIP機のデータリンク搭載改修として報道されていたものだ。
注目すべきは参考資料の運用構想図でF-2と連接している、「前線航空統制官等」の存在であろう。
空自/陸自のCAS/FAC体制は整備が不十分と言われていたが、この改修で防空のみならずCAS体制をも強化しようという腹積りのようだ。


一気に21頁まで飛んで主要装備品調達要求、まずは航空機でなんと空自が新規調達皆無。
代わりにF-15/F-2/E-767/E-2Cの改修事業を一気に推進するということらしい。
艦船はDDが2隻の代わりにSSがゼロだが、これは以前から言われていた通り。
誘導弾は陸自の調達数が増加傾向にあるが、特に新規調達のATM-6を20セットも要求してるのが目を引く。
火器車両等では去年と打って変わって89小銃がゼロ、それ以外は特に大きな変化は見られない。


と言ったところで事業評価の方に目を移してみる。
http://www.mod.go.jp/j/info/hyouka/20/jizen/index.html
まずATM-6こと中距離多目的誘導弾、恐らく初出となる実物の写真が載っている。
発射機は六連でMPMSと同じく横1列に並んでおり、その上にIIRセンサとミリ波レーダらしきものが付いてる。
写真は車載発射機のみだが、運用構想図には地上布置型の発射機も描かれている。
次は全天候対応駆動システムの研究だが、これは回転翼機に関する要素技術である。
参考資料には運用構想図とロータマストのDMUが載っているが、実はどちらも去年の市ヶ谷で発表された資料の使い回しである。
資料はヘリコプター揺動制御技術についてのものだったが、これは機動性と安定性を高度な領域で両立させる技術とのこと。
一体型MDCにブレード変位センサを実装し、ロータ面傾斜量を直接検出・制御するロータ面直接制御システムの実現がその内容である。
TS1改にしても一体型MDCにしてもそうだが、既存機に適用されていない回転翼機に関する要素技術が随分増えてきてるように思われる。
そろそろ新型の回転翼機開発の話が聞こえてきそうなものだが、まだだろうか。
無人航走体構成要素の研究はいわゆるUSV/UUVの研究だが、注目すべきはリアルタイムデータ伝送技術を主たる研究項目としていることだ。
現在の無人ヴィークルはいわゆるpreProgramingやCommandによって制御されており、Controlにまで至った例は極めて限られている。
まして画像や音響データをリアルタイムで伝送するというのは、軍用通信帯域の狭さを考えると何処まで出来るかというもの。
高出力レーザシステム構成要素の研究は、主に巡航ミサイルやASM/ARM、誘導爆弾などをハードキルするCIWSへの適用を想定したもの。
これもやはり去年の市ヶ谷で似たような発表があり、三菱重工からMD用高出力固体レーザとして各種アプリケーションへの適用が提案されていた。
地上部隊や艦船用の指向性エネルギ兵器としてはもちろんだが、レーザレーダシステムや通信、エネルギ伝送システムが一緒に並んでるあたりが流石と言う感じ。
技本が目指すのは固体レーザではなく化学励起ヨウ素レーザで、果たしてどっちが先に兵器級の高出力を達成するのやら。
最後に統合防空システムシミュレーションの研究だが、気になるのは運用構想図に航空機搭載センサとしてUP-3Cが、無人機として高高度滞空型無人機が描かれていること。
こう書くとAIRBOSSでBMDかと思うが、両機から出ているセンサビームは明らかに戦闘機とASM及び巡航ミサイルに向かっている。
実は8/28の日刊航空通信ブログで、AIRBOSSをステルス機探知に使うかのような発言を技本の部長がしているのだ。
赤外線センサの一種であるAIRBOSSなら可能と思えなくも無いが、なんか引っ掛かる。

こっちも㌧でるネジを数えてみよう

去年あたりからBoeingは米空軍の次期戦術輸送機AMC-Xに対して、C-17Bを提案している。
胴体中央に脚を一本追加するというアレな内容だったが、更にネジの外れた詳細が出てきた。
http://www.flightglobal.com/articles/2008/08/19/314814/boeing-offers-c-17b-as-piecemeal-upgrade.html
C-17Aからの主たる変更点は以下の通り。
・エンジン推力増強
・中央主脚ボギー追加
・二重スロッテッドフラップ
これらの変更によって更なるSTOL性能向上と不整地での運用能力向上を図る、としている。
更に実現する可能性が低いとしながらも、全CFRP構造の主翼とGEnxのスケールダウン型を提案しているとのこと。
流石にここまで来ると新規開発した方が良いとは、彼らも自覚しているらしい。
でもぶっちゃけ上の三項目もコストパフォーマンス悪いんじゃないか、という疑問が無いでもない。
そもそもAMC-Xの仕様はC-2やA400Mに近い戦術輸送機のそれで、C-17では機体規模からして過大というもの。
空軍だけで500機以上にもなるC-130とその派生型を代替出来るほど調達可能なのか、出来たとして維持費はどう捻出するのか。
滑走路面加重もボギー一本追加したくらいでC-130を下回る訳も無し、どうすんだろうね。
というかこの改造で自重増えたら元も子もないんじゃないか?
増強した推力も重量増えたら最悪それで帳消しだし、推力増強にしても燃料消費量増加に繋がるわけだし。
あと根本的に機体形状見直さないとMach0.8以上で巡航とか無理だろ、と。


さて半ばお約束みたいなかんじだが、またJANがやってくれました。
http://www.aviationnews.jp/2008/09/c17_ad2b.html
原文見れば判るがCFRP主翼もGEnxも本提案ではないし、これが提案内容だったなら当然20億ドル強で済むような内容の筈もない。
そもそも提案されてるのは787や747-8に搭載されるGEnxそのものではなくスケールダウン型だし、本提案はそれですらなくF117-PW-100の推力増強。
更に主脚ボギー追加についても全く触れておらず、合ってるのはフラップだけという有様。
GEnxの名称をミスタイプしてるのなんて些細に思えるほどだ。
つかGEnxをそのまま搭載したら明らかに推力過剰&燃料消費量増加だろ、何考えてんだ。