C-X/P-X小ネタ

規格外貨物向け商用高速貨物輸送機事業化へ

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070703AT1D0204V02072007.html
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=FN&action=m&board=1007012&tid=c0nbajbde9a96h&sid=1007012&mid=23805
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/kz/0000436268.shtml
例のC-X民間転用ネタ。
飛ばしの日経以外には神戸新聞しかソースが無いことに一抹の不安を覚える。
航フ辺りで裏取りするまで安心出来ない。


何か勘違いしてる方々も多いのでとりあえず同ネタの纏め。

発端

06年ファンボロ航空ショーにでKHIが出展した4枚のパネル/パンフが元ネタ。
それ以前から経産省が働きかけてた可能性も多分にあるが大きく宣伝されたのはこの時が初。

提案内容

パンフの数字から推測するに空自での運用よりも滑走距離の制限を緩和することで最大離陸重量を設計限界まで押し上げたものと推定。
これによって同クラス(A400M/An-70/Il-76)と同水準にまで航続距離とペイロードが引き上げられている。
基本的に機体そのものは空自向けのC-Xと同じと考えられる。

他機種に対する優位点(比民間旅客機改造型フレイター)

最大の優位点は規格外貨物への対応能力としている。
4*4*16mの貨物室へ後部ランプから容積ギリギリの規格外貨物を収納可能な軍用カーゴシップとしての特徴が最大のセールスポイントであろう。
またランプの位置が低いことも他には無い特徴であり、リフトローダーの様な特殊な積み降ろし機材を必要としないメリットがある。
なお貨物室の容積はランプまで使用した場合463Lパレット換算で12+4枚6+2枚の搭載が可能な模様。
LDコンテナ換算では2段積みでもやらないと4mの高さが無駄になるので民間フレイターに対する優位点は殆ど無い。
一方でパレット積みの場合は747Fでも不可能な4m高の貨物を扱うことが可能となる(747Fは3mまで)
貨物周りでは省力化搭載卸下システムの採用も挙げられており、他にはHUDの採用やSTOL性、統合型飛行管理システムなどが提示されている。
統合型飛行管理システム(Fully-integrated Flight Management System)は戦術輸送飛行管理システムを基にしたシステムと推測される。

他機種に対する優位点(比高翼型軍用貨物輸送機)

最大の優位点はいわゆる民間航空路線を使用可能ということである。
既存の軍用貨物輸送機は何れも高高度での巡航速度が民間旅客機に比して低いという傾向がある。
比較的最近に開発されたC-17やAn-124でさえも高高度での巡航速度はM0.8に届かず、現時点でこの要求に届く機体は無い。
特にC-17はイラクやアフガンへの輸送任務でその速度が問題視され、結果として米軍は新たな輸送機計画AMC-Xへの要求に民間航空路への対応を盛り込んだ。
速度以外にはエンジンに民間で多数採用され運用実績を積み重ねているCF6-80C2を採用している点が評価できる。
元々は自衛隊での運用性と取得性を考慮しての採用であったが、この措置は結果として民間での導入に対するハードルを下げることとなった。
軍用貨物輸送機は民間での採用実績が乏しいエンジンを採用している場合も多く、特にターボプロップ機はその傾向が強い。
例えば先に挙げたC-17の場合はPratt&Whitney PW2000の軍用途向けであるF117-PW-100を採用しているが、同エンジンを民間で採用してるのはボーイング757のみである。

需要・用途について

規格外貨物の輸送は現在An-124とA300-600STの独占状態と言って良いが、An-124は需要増加に応えるため製造再開が決定されている。
一例としてエールフランスボーイング777-200ERに搭載されていたGE90-94Bの輸送にAn-124が使われたという実績がある。
同ケースではエールフランス機がエンジントラブルで着陸した先の空港にスペアエンジンが無かった為にエンジンの空輸が行われた。
GE90シリーズはその巨大さゆえに完成状態での空輸が困難であり、本来なら不必要な運用上のリスクを招いている。
C-Xは同エンジンを2基積載可能であり、民間型として就役すればこのような需要に応えることが出来るであろう。

ほんぢつのロールアウト映像で気付いた点ぼちぼち

P-XのAPU排気口とチャフ/フレア・ディスペンサーの装備位置判明。
APUはMADや後部レーダーもあるので後端に開ける訳にはいかんのだが、位置的にP-3Cよりはマシであろうか。
あとは結局大したことは判らんかった。

それ以外の小ネタぼちぼち

P-Xの翼面積

ニムロッドやP-8Aと並べると結構広め。
というよりP-8A小さ過ぎ細過ぎ、そりゃ低空でのエンベローブが狭いとか言われるよ。

P-Xの鼻

でか過ぎ、ニムロッドよりもでかい。
どんだけでかいアレイ積む気だ、しかも4基も。
一方P-8AはP-3Cと同クラスのレーダーしか積めない模様。
ニムロッドも中途半端に取り付け基部が下がってるのでそんなに大きなアレイは積めないっぽい。

C-Xのタイヤ数

よくよく考えたらC-17やA400Mと同じ数だった。
直径も幅も大差ないので不整地運用性はA400Mとどっこいか。

調達価格

ほんぢつ公開された1号機の調達価格が"両機合わせて"641億円弱、同時期に調達されたエンジンも含めると契約額は合わせて822億円。
これを知ってか知らずかロシア人が予測した両機の量産価格は以下の通り。
http://www.aeronautics.ru/archive/reference/Military_Aircraft_Prices/KAWASAKI%20HEAVY%20IND.%20LTD.htm
幾らなんでも安過ぎぢゃないか?

07/07/28追記
元サイトが綺麗サッパリ消滅しちゃったので要所だけ転載。
AIRBUS MILITARY (Subsidiary) A400M 80000000
AIRBUS A330 FSTA 140000000
ANTONOV AN-70 50000000
LOCKHEED MARTIN C-130J 60000000
LOCKHEED P-3C (NORWAY) 34700000
LOCKHEED P-3C (SOUTH KOREA) 45000000
LOCKHEED P-3C (USN) 34700000
BOEING C-17(USAF) 198000000
BOEING KC-767 150000000
BOEING 767 AWACS 403000000
BOEING E-3D (UK) 145000000
BOEING 737 AEW&C 70000000
CASA C-212-400 (MIL.) 5500000
KAWASAKI C-X 60000000
KAWASAKI P-X 75000000

ついでに読売がC-Xの単価は100億なりと報道。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070727i201.htm
>CXは1機約100億円で、初年度となる08年度は数機を調達する予定だった。防衛省によると、総調達機数は最大で40機程度となる見通し。

110億なのか90億なのかは蓋を開けるまで判らんが「コストはやはり国際標準価格の2倍以上となる見込みだ」とかほざいてたどこぞの記者の感想を是非ともお聞きしたいものだ。

防衛省は26日、2008年度予算で予定していた航空自衛隊の次期輸送機(CX)の調達について、09年度以降に先送りする方針を固めた。

( ゚Д゚)

( ゚Д゚ )


もうさっさと民間に売り出してしまへ川崎重工

YPX

http://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/e00/03/h18/246.pdf
いわゆるP-X民間型、しかしその共通性はC-X→P-Xほどにも無いのであった。
DC-9の後釜狙いらしいが、新たにもう一機種開発するだけの余裕は果たしてあるのか。

パリ航空ショー

http://www.geocities.jp/ryo298jp2/paris0701.html
http://www2g.biglobe.ne.jp/~aviation/paris07a.html
何気に展示してたらしい。
新ネタはC-XとYPXの新しいイラストと映像展示の模様。
KHI公式サイトで公開しねーかな。

海自固定翼哨戒機変遷乃図

どっかの元審議官が「海自の固定翼哨戒機はトラッカーの供与に始まった」とか「保有数100機という数字を惰性で維持」とかほざいてたので作ってみた。
http://www.heinkel.jp/images/asw_history1.jpg
http://www.heinkel.jp/images/asw_history2.jpg
http://www.heinkel.jp/images/asw_history3.jpg
ちなみに機種変遷は防衛白書に図入りで他の装備まで網羅された豪華な奴があったりする。
ついでに言うなら機数変遷の数字は全て防衛白書から洗い出したもの。
モノ書きで金貰おうってんなら「随分と執筆速度が遅いですね」なんて他人に言う前に、この程度のことは調べて下さいませ。

*1http://www.heinkel.jp/images/asw_history1a.jpg

更にそれ以外の関係無い小ネタ

ポリフェム

英字wikipediaを見たら2003年にキャンセルされてやんの。
http://en.wikipedia.org/wiki/Polyphem
E-FOGもポシャって残るはIDASだけか、ざまーねー。
http://www.designation-systems.net/dusrm/m-157.html
http://www.marine.de/01DB070000000001/CurrentBaseLink/W26VLDD5902INFODE
koueiさん、最新の資料でわざわざMPMSのところに
「この方式の対戦車ミサイルは現在、欧米でも開発が進められており、ドイツではポリフェム・ミサイルがある」
なんて書かないで下さいよ、枠も少ないのに。
さぁて03年以降に書かれた日本語メディアで、ポリフェムのキャンセルに触れてるのはどんだけあるのかしら('A`)

*1:2008/10/14更新版