ここ数ヶ月の軍事関連覚え書き

5000t型汎用護衛艦

世艦の編集部がSPY-1F搭載のミニイージス艦になるとか言い出したり、予算概要請求のイメージ図でやっぱFCS-3だのいやSPY-1だって分離配置出来るだの言われていた5000t型汎用護衛艦、通称19DDの搭載レーダーシステム。
各所で散々言われまくっていたが、とうとう朝雲ニュースにて予算概要請求では判らなかった搭載レーダーがFCS-3改であると明言された。
また同時に搭載兵装についても従来どおり短SAM一本で、艦隊防空用のSM-2は搭載されない見通しとなった。


個人的にはたったの848億で満載6000t超のミニイージスが建造出来るわけが無いと思っていたので、特に衝撃的というわけでもなかった。(フルスペックイージスであるあたご型の場合イージス関連取得費用だけで509億)
848億という値段も内容を見れば寧ろ安く抑えたなと思わないでもないのだが、それでもなお大量取得は望めそうも無い予算状況は如何ともしがたいのであった。

13500t型ヘリ搭載護衛艦

今までイラストとCGばっかで、あたご型のようなウォッチャーも居なかったためちっとも建艦状況が見えなかった13500t型ヘリ搭載護衛艦、通称16DDHであるが、これも朝雲ニュースにて写真が公開された。
ブロック工法の船の常と言うか、実際の作業状況よりも進んでいないと錯覚させるような写真であるが、作業は予定通り順調だそうである。
それにしても矢張り不思議な光景である。

次期輸送機/次期固定翼哨戒機

ここに来て(と言っても10月辺り)色々と写真やらが公開されたので纏めて貼り付け。
http://www.asagumo-news.com/news/200610/061005/06100509.html
http://www.asagumo-news.com/news/200611/061116/06111602.html
http://www.rose-ridge.com/100-C-X.htm
最後のはKHI謹製のレジンモデルらしいが、恐らく技本発表会やファンボロで公開された技本カラーの模型と同じものであろう。
P-Xについては既に纏めてあるので今度はC-Xについて少々。


C-Xのコンセプトは基本的に高速巡航と大搭載量と長航続距離である。
後ろ二つについてはC-1では現状の任務に対応しきれないことやC-130でも限界があることから、単純に能力の向上を可能な範囲でおこなっている。
問題は高速巡航というコンセプトで、これは民間の旅客航路を利用することによって効率的な運用を可能とするために求められた要求である。
従来の高翼型軍用輸送機は、ジェット/ペラ推進の違いに関係無く低翼型民間旅客輸送機よりも巡航速度が低い傾向にあった。
まず構造的に高翼配置は低翼配置に比べて巡航速度が遅くなるという航空力学上の特性、次いで規格外貨物搭載の為に断面積が大きい胴体という運用上の要求の違いが挙げられる。
また軍用輸送機では大きな速度向上が求められてこなかったのに対し、民間旅客機はボーイング747や787などに見られるように、巡航速度を向上させることによって運行効率を高めるという考えがあった。
このため民間旅客航路は今や鈍重な軍用輸送機では使えない"高速路線"となってしまったのである。
C-Xが目指した、"高速路線"を利用することにより運行効率を高めるという考えは、民間旅客機の考えそのままと言っても良い。
このためC-Xは洗練された機体形状、高速巡航に最適化された主翼、そして中等練習機であるT-4にも匹敵する推重比0.4を達成するパワープラントを採用している。
このエンジンは既に空自運用されているE-767やKC-767J、政府専用機と同一のGE社製CF6-80C2で、また全日空日航でも600基以上が使用されており、国内運用基盤は十分なまでに確立されている。
またこのパワープラントによる高い推重比の副次効果として高いSTOL性も確保されており、国内の短い滑走路での運用にも支障が無いようになされている。
なお川崎重工は本機を民間向けに販売することを検討しており、ファンボロ航空ショーでは模型と共に民間型のスペックやイラストを載せた資料を配布している。
これはC-Xの軍用輸送機としての特性である貨物搭載作業の簡易性と規格外貨物への対応、民間航路を利用することによる運行上の利便性と効率の向上等の特性を見込んでのものである。
規格外貨物の空輸では現在のところAn-124とA300-600STが存在するが、An-124は搭載量こそ圧倒的ではあるものの巡航速度は遅く到底民間航路で使えるものではなく、A300-600STは速度も搭載量も問題ないが搭載作業に難があるのと数が少なすぎるという問題がある。
両機ともに民間のエアラインが所有するにはハードルが高く、値段もあまり現実的ではないと思われる。
C-Xは現在のところ、このクラスの輸送機としてはかなり安く収まる見通しで、これはP-Xとの共通化による開発費低減の成果でもある。
A400MやAn-70が開発費や開発そのもので大きな躓きを見せているのとは対照的であり、ライバル機種に差を付けているという点でもある意味P-Xと共通化しているとも言える。
なおA400MとAn-70は寸法や搭載量等の主要スペックはC-Xに近い機体であるが、両機共にターボプロップ推進の4発であり、ターボファン2発のC-Xとはこの点で非常に対照的である。
また両機のパワープラントは多数の新機軸を採用したが為に技術的なトラブル等を多数解決しなくてはならない状況だが、C-Xはベストセラーの言わば"枯れた"エンジンを選択しており、この点で不安要素は全く無い。
C-Xは全く違う任務の機体と共通化し同時並行開発するなど相当な冒険をしているプロジェクトではあるが、使用されている技術は逆に極めて堅実で無理の無いものと言える。