T-72

1960年代初頭に、当時開発が難航していた「T-64」の保険としてウラル運輸車両工場設計局「UZTM」に対し開発の指示が出された。
最初の試作車両「オブイェークト167」は1963年までに2両製作がされたが、このシリーズは結局習作に終わる。
一方、制式化された「T-64」はトラブルが相次ぎ、全部隊へ行き渡らせる事が困難なほどに高価な戦車となってしまった。
これに見切りを付けた軍は、「UZTM」設計局に対し「T-64」より安価かつ強力な戦車の開発を指示。
1970年には「T-64」をベースにした試作車両「オブイェークト172」が完成、1973年に「T-72」として制式化される。

本車の全体の構成は基本的に「T-64」と同等のスペックを保持しつつ、生産性と信頼性を大きく高めたものである。
T-64」の最大のネックであった動力部は、水平対向ディーゼルから「T-34」以来の伝統とも言うべきV形ディーゼルに変わり、十分な出力と信頼性を得ている。
出力は「V-46」で780hpに達し、後の型では「V-84」に換装され出力は840hpにまで向上している。
足回りは主転輪が大直径のものに変更されており、履帯*1もダブルピン方式*2からシングルピン方式*3に変えられている。
また、「T-64」では人食い装填装置*4とまで言われた「コルジナ」自動装填装置を、より信頼性の高い「カセトカ」自動装填装置に変えている。
武装は「T-64」と同様、51口径125㎜滑腔砲「D-81TM」12.7㎜重機関銃「NSVT」7.62㎜同軸機銃「PKT」が搭載され、主砲は後の改良で51口径125㎜滑腔砲「2A46」に換装されている。
装甲には、やはり「T-64」と同様に複合装甲を装備、同時代の西側の主流であった105㎜戦車砲に耐える事が可能とされていた。
複合装甲は車体全面、砲塔前面と側面に施されており、グラスファイバーやチタン、セラミックによって構成されていると思われる。
装甲防御力は後のレバノンやアフガン、イラク等での戦訓によって逐次強化されており、最終的には砲塔や車体全体に爆発反応装甲*5のブロックが貼り付けられている。
一方、国外輸出仕様の所謂モンキーモデルでは複合装甲は通常の圧延防弾鋼鈑にグレードダウンされており、装甲防御力は大きく低下している。

T-72」は出現当初、西側当局を慌てさせるほどの高い能力を持ち、NATO諸国を震撼させる存在であった。
当時のソ連の秘密体質のお陰で、西側当局は一時「T-72」と「T-64」を混同し、また「T-72」の改良型を「T-80」や現実には存在しなかった「T-74」と勘違いするなど、存在その物が西側当局を混乱させるものだった。
しかし、ソ連崩壊前夜の湾岸戦争イラク軍のモンキーモデル「T-72M1」が多国籍軍の戦車に一方的に撃破され、西側に燻っていた「T-72」に対する過大な評価は吹き飛ぶ事となる。
湾岸戦争では「T-72」以外にも多数のソ連製兵器が使用されたが、何れも多国籍軍の攻撃には無力であり、これによってソ連製兵器全体の評価が大きく下がる結果となった。
ソ連崩壊後の現在、ロシア軍で使用されてる「T-72」はほぼ全てに爆発反応装甲が追加され、またFCS能力の向上や主砲発射ミサイルの運用能力の追加がなされている。
しかし、モンキーモデルによって低下した輸出市場での評価を取り戻すのは難しく、「T-72」の輸出の道は実質閉ざされてしまっている。
T-72」をベースに「T-80」並の高級装備を施した「T-90」も売れ行きは余り良いとは言えず、インド陸軍が採用するに留まっている。
一方、ソ連時代に東側諸国などに大量に輸出され、また各国でライセンス生産された「T-72」のモンキーモデルは未だに多数残っており、それぞれの国で独自の改良を施している。
本車を採用していない国でも改良パッケージの提案がなされており、輸出市場では熾烈な競争が繰り広げられている。
中には西側規格に完全に変わってしまったものもあり、追加装甲によって原型を留めていないのは最早当たり前となっている。
輸出先では未だに改良を施され運用が続けられている「T-72」であるが、ロシア本国での未来はあまり明るいとは言えない。
ロシア陸軍の戦車の主力は「T-64」系列の「T-80」や「ブラック・イーグル」に移っており、「T-72」の設計思想を受け継いだ戦車が作られる見込みはまず無いからだ。
T-72」はソ連の崩壊と共に事実上主役の座を降り、言わばソ連と運命を共にしたのである。


それでは最後に「T-72」関係者からのお言葉をどうぞ。

カルツェフ技師
「ブァカ者がァアアアア ウラル車両工場の設計は世界一チイイイイ!!
レオパルドのパワーを基準にイイイイイイイ… 
このT-72の主砲は作られておるのだアアアア!!」

ブレジネフ書記長
「なかなかの強さだ、レオパルドⅡ。1台でT-72を3・・いや四台分を倒せる強さはあるだろう。
だが、いかにレオパルドⅡがT-72を何台倒せようと関係ない処刑方を思いついた!。
(後ろにズラーっと並ぶトーポリ*6
察しが良いなNATO青ざめたな!貴様は将棋やチェスで言うチェックメイトに付いたのだ!」

名無し戦車兵
「フン!くだらんなあ〜〜〜〜〜1対1の対戦車戦なんてなぁ〜〜〜〜っ

このT-72の目的はあくまでも「侵攻」!
あくまでも「核戦争下のスチームローラー」になること!

レオパルドⅡのようにアウトレンジするつもりもなければ
90式戦車のように1台4殺をするわけでもない・・・・
どんな単純な砲塔デザインだろうがどんな手を使ってでも・・・
最終的に・・・・・・

世界を赤化出来れば良かろうなのだァァァあァァ!!!!! 」

Объект

*1:クローラーもしくは無限軌道:キャタピラーという呼称が一般的ではあるが商標なので余り使うべきではない

*2:一つのブロックを二つのピンで留める方式:能力は高いが部品点数が増える結果高価になりがちである

*3:一つのブロックを一つのピンで留める方式:能力は落ちるが部品点数が少なく安価

*4:初期不良で砲手の腕を装填するという事故が多発したと言われる

*5:被弾時に爆発して弾体の運動エネルギーを低下させる装甲:後からの追加が容易であるが効果は一回きり

*6:自走式核弾頭搭載地対地ロケット